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思考停止という至福

No.97(2002.10.02)


かつてニューエイジという怪しげなものがブームになったことがありました。

ハリウッド女優シャーリー・マクレーンが著した「アウト・オン・ア・リム」という物語がこれを一般大衆に浸透させることに大きく貢献したと言えます。

精神世界を中心になんでもありのその内容は話の面白さとは別にニューエイジのカタログ的機能も兼ね備えていました。

御多分に漏れず私も引き込まれるように続編まで一気に読み終えた時には、それぞれの分野をさらに探求しなければならない、という使命感のようなものすら感じていました。

ですからその後に輪廻転生、前世、瞑想、チャネリング関連から始まりUFO、宇宙人、陰謀論を経てエドガー・ケイシー、サイババ、日月神示、波動などまでなんでもかんでも読み漁りました。

私的に幸福を希求していたり、公的に理想社会の実現を目指している際に現実の壁に突き当たり、絶望感、無力感に打ちのめされるという経験は誰にでもあることではないでしょうか。

そんな時に耳元で甘い囁きが、、、

これさえあれば即万事解決!

熱が冷めた後に私が考えついたのは、ニューエイジの中身とは結局こんなものではないか、ということでした。

私は霊や輪廻転生を肯定も否定もしません。というよりも実際に心霊体験をしたことがない以上、分かりません知り得ません、という方が適切です。

別次元の世界が仮に存在するとしても、今生きている現世に軸足を置くのが自然であると考えています。

ニューエイジの怖いところは全ての「現実」を別の(例えば霊的)尺度で解釈するようになってしまうことです。「考える」ことを止めて「当てはめる」ことに異常に執着するようになります。

直面するあらゆる出来事に必然性を見出さないと気が済まなくなってしまい、異なる意見に対する寛容さは消失します。

私自身も農村という情に厚いところで自然に囲まれて生活していなかったらいまだにニューエイジに染まったままだったかもしれません。

鉄製の道具が錆びたりアスファルトの道路に雑草が生えて崩れていくのは人間にとっては都合が悪いことです。

しかし、どちらも土に返そうという自然の摂理がはたらいているだけのことで、そこに良し悪しなどという基準はありません。

私はこのような自然現象からしか「神の意志」のようなものを感じることはできません。

地に足がついていないまま天の声に耳をかたむけるのは非常に危うい行為だと思います。
また、現実世界にはあらゆる問題を一挙に解決できる万能な存在などありません。

なお、現在でも金儲けを目的としたニューエイジの罠が存続しているようですのでご注意を。


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