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不思議な味の変化

No.14(1999.10.16)


自然の中での生活を始めてから野生の果実を口にするようになりました。

私が住んでいたところでは木イチゴが何種類かありました。

中でも小粒のイクラを集めたような真っ赤な実のなる木イチゴは、とげのある茎が冬には立枯れして始末に悪く、しかも根で周囲に広がってゆく困りものの雑草でした。

しかしその実は私に活力を与えてくれました。

夏場に南国の太陽の下で草刈機を使って作業をすると、都会育ちの私は疲労困ぱいしてしまいました。

のども渇いているそんな時に、その木イチゴの実を食べると、まさに起死回生と言っても大袈裟ではないくらいに力がわいてきたのです。

もちろん味も自然な甘さでとても美味しいのでした。

美味しいものだから次から次へとその実を口にはこんで食べ続けていると、不思議なことが起こりました。

ある時点から突然その実が美味しくなくなるのです。

にがくなったりするわけではないのですが、味がなくなってしまうのでした。

最初は果物と同じで味のばらつきかと思いましたが、そうではなく私自身の味覚が変化していたのでした。

これは絶対に食べ過ぎることのない食べ物だと思いました。

この現象は本能の現われでしょうか。

考えてみれば野鳥の中には無尽蔵な食べ物に囲まれているものもいるでしょう。

しかし肥満の野鳥を見たことがありません。

我々のような味覚をもっているのかどうか知りませんが、ある種の本能が働いているのでしょう。


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