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コンビニ弁当を食す

No.68(2007.05.16)


私は、日本経済新聞最終面左上に掲載されている一月一人物連載の「私の履歴書」を読むのが好きだ。

ただし、あまりに自慢話が過ぎる人の場合は月初めの二三日で嫌気がさして読むのを止めてしまう。

先月の執筆者は、昭和49年にコンビニエンスストア(セブン-イレブン)を初めて日本で出店させた鈴木敏文氏であった。

コンビニをまったくと言っていいほど利用しない私だが、興味深く最後まで読み通してしまった。

正確には記憶していないのだが、文中にコンビニ弁当に言及している部分があり、無添加は当たり前だとされていた。

それにとどまらず、材料素材も吟味したものを使って差別化を徹底する、といった内容の記述もあったように思う。

普段コンビニ弁当に嫌疑を抱き、敵意に近いものを感じている私だが、そうまで言われては黙っているわけにはいかなくなった。

氏の主張に沿って、過去にとらわれずに自分の頭で考えるべく、一度コンビニ弁当を食してみる決意をしたのであった。

我家の近くのコンビニはファミリーマートが一番多く、次いでローソンとなるだろうか。

仕方がないのでちょっと足をのばして隣りの市にあるセブン-イレブンへ買いに行くことにした。

けっこう弁当の種類が多かったので迷ったものの、定番を食すのが筋だろうと考え「折詰め幕の内弁当」を選んだ。

大食いな私は、それだけでは足りないであろうから、主食を多く食すという方針に従って「手まりおむすび5個入り」も併せて買ってみることにした。

レジに持って行く前に、底に貼ってあった原材料名をチェックしてみると、、、

あれっ!?

食品添加物入ってるじゃん。

っと、この時点で買うのを止めていればよかったのかもしれない。

が、時既に遅く、実際に食してみたいという気持ちが止めようという気持ちを凌駕していたのだった。

家に帰り弁当をよく見ると、電子レンジでの加熱時間の目安が記載されてた。

実はかつて処分してしまい我家には存在しなかった電子レンジは、食品の解凍加熱とは別の目的で復活していたのだ。

しかし、今回はあくまで弁当それ自体を検証するのが目的なので、高周波の悪影響を排除することとし、常温のまま食してみることにした。

食べ始めてみると、当然すごく美味しいなんてことはないものの、不味くて食えないということもなかった。

さらに食べ続けていると、だんだん妙な気分になってきた。

お腹はまだまだ空いているはずなのに、食べるのを止めたいと感じるようになってきたのであった。

不思議なことに顔が無表情になっているのを自覚している自分を意識していた。

ふと以前読んだ食に関する小林よしのり氏の漫画を思い出した。

氏がファミリーレストランで食事をすると、最初は美味しい感じもするが必ず途中で食べるのを止めて残してしまう、とのお話だった。

多分私がその時感じていたのもそれと同じ気分だろうと思われた。

もっとも私は氏ほどデリケートではないので全部平らげてしまったが。(苦笑)

食後感は特に悪くはなかった。

コンビニ弁当とは、食べる喜びや食べることのできる有り難さを感じる心とは無縁の食べ物なのではないかと思った。

心ではなく身体が寂しさ悲しさを感じながら食べていたように思う。

もっとも、強烈な香料や化学調味料で貪るように食べさせられ、食後感は最悪、というような工業製品色の強い食べ物と比べればまだましかもしれないと思った、皮肉ではなく、だ。

職場で愛妻弁当を食している自分の境遇は恵まれたものなのだ、という認識が足りなかったことを反省させられた失敗談であった。


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