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殺すための薬

No.22(2002.11.11)


夏になると網戸があっても家の中に蚊が入ってしまいます。ドアや窓の開閉時に紛れ込んだり網戸と窓の隙間から入り込んだりするからです。

電灯を消して寝床に入ってうとうとし始めた頃に耳元で蚊に飛び回られるのはまさに安眠妨害です。

食事法を変えてからは化学物質を遠ざけるようになったので、寝る時に蚊がいてどうしても気になって眠れない場合には電灯を点けて手で殺しています。

それでも寝室の窓を細く開けて寝ているため朝方に新たに蚊が入ってくることもよくあり、そういう時はふとんをかぶって顔を隠して刺されないようにしています。

夏場にはどうせ起きている時に時々蚊に刺されているのでそれで別段不都合はありません。

東京に住んでいた頃は今思えば取り立てて蚊が多いというわけではなかったのに夕方になると蚊取りマットのスイッチを入れ、朝までそのまま使い続けるのが普通でした。

実際はそれほど必要性がないのに深く考えずに何となくそうしていたのは知らず知らずのうちにテレビ・コマーシャルに影響されていたからかもしれません。

この様に無自覚かつ意識せずに行動していたこと自体がミスでした。

その後田舎暮らしを始めてから除虫菊を原料とした蚊取り線香を使ってみたことがあります。天然の成分では蚊を近づけない効果はあるものの蚊を殺す力はありませんでした。

また野外で蚊を寄せ付けないために、(確か)杉や桧などの生葉を火にくべた際に出る煙が効果があることも土地の人に教えてもらいました。(蚊遣り火)

要するに蚊に刺されないようにするのが目的ですから本来は必ずしも蚊を殺さなくてもよいのです。

蚊や蝿、ゴキブリなどのいわゆる害虫を皆殺しにする威力がある毒薬が、その一方人間にはまったく影響が無く無害であるなどということがあり得るのでしょうか。

「いのち」を奪う力があるわけですから、人に対しても生きようという気持ち、意欲、活力を減退させる働きをすると私は考えています。

かつて我家で蚊取りマットを使っていた頃はエアコンどころか扇風機もなかったので、窓を開けっ放しにして網戸から涼しい外気を取り入れながら寝ていました。ですから殺虫ガスは拡散したでしょうしそれほど高濃度にはならなかったでしょう。

熱帯夜だからと窓を締め切って冷房しつつ蚊取りマットを使った場合、寝ている間にかなりの毒ガスを吸うことになるでしょう。

人間の目がチカチカしたり咽喉が痛くなったりしないように改良されている殺虫ガスでは、その場での自覚症状はありません。

これを化学兵器に置き換えて考えてみると、攻撃された側が気が付いた時には既に手後れという高性能のものであるということです。

まだ蚊が刺しに来ないうちに先制攻撃する必要はないと思いますし、ましてや皆殺しにするなどというのは非常に野蛮なやり方です。それに対して何も感じないほど日本人の感性は鈍ってしまったのかもしれません。


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